大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和28年(オ)1362号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

所論は、本件通告は行政事件訴訟の対象となる行政処分であると主張する。しかし、行政事件訴訟特例法が行政処分の取消変更を求める訴を規定しているのは、公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によつて、国民の権利義務を形成し、或はその範囲を確定することが法律上認められている場合に、具体的の行為によつて権利を侵された者のために、その違法を主張せしめ、その効力を失わしめるためである。

従つて、特例法にいう行政処分はこのような効力を持つ行政庁の行為でなければならない。しかるに、本件における市町村農業委員会は、いかなる法律によつても個人の農地所有権の範囲を確定する権限が与えられているものではなく、本件通知は法律上何等の効力を有するものではない。

それ故、本件通知をもつて特例法にいう行政処分と解することはできない。

このことは、本件農地が国から売渡を受けたものであることによつても別異に考えるべき理由はない。売渡によつて上告人の所有に帰した土地の区域は売渡処分そのものによつて定まつているのであつて、本件のような通告によつてその区域を変更し、或は確定することはできないのである。

されば、前述のように右通知が行政処分たる性質をもたないから、その無効確認又は取消を求める本件訴を許されないものとした原判決は正当に帰し、論旨は採ることを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例